全校放送礼拝(12月1日)

11月30日(水)から3日間、本校の朝の礼拝は全校放送礼拝です。
本日はその2日目、河合校長のメッセージをご紹介します。
どうぞお読みください。




◆讃美歌 114(天なる神には、みさかえあれ)


◆聖 書 マタイによる福音書7章9節〜12節

   あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。
  魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。このように、あなたがたは悪い者
  でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、
  あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない。だから、
  人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。



◆メッセージ

 今日から12月に入りました。教会の暦では「アドベント」といってイエス・キリストの
誕生を迎える備えの時に入っています。
 イザヤ書に、次のような聖句があります。

  ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。
  ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。
  権威が彼の肩にある。
  その名は、「驚くべき指導者、力ある神
  永遠の父、平和の君」と唱えられる。
(イザヤ書9章5節)

 私たちは、イエスの誕生が全世界の人々に救いをもたらし、争いやねたみから生まれる憎
しみを取り除いてくださる「平和の君」としてその誕生を祝うわけです。





 「クリスマス」というと、どこか温かい、また私たち大人にとっては子供時代の懐かしい
思い出の一こまとして受け止める傾向にありますが、イエス・キリストが誕生した時は、世
の中は決してそのようなノスタルジックな世界ではありませんでした。そして、ノスタルジ
ックでないということは、現代においても言えることです。
 民族間の争いの中で、多くの人々の命が奪われ、また多くの子供たちがその惨禍のなかで
傷つき倒れています。言語に絶する苦悩と悲痛に満ちた顔と姿の子供たちが現実に今も存在
しているのです。
 そういう子供たちに対して、私たちは何ができるのでしょうか?


 ここに一冊の本があります。今から27年前、1983年に出版された『人間の大地』と
いう書物です。作者は犬養道子、5・15事件で殺された総理大臣、犬養毅の孫になります。
犬飼道子さんは世界中の難民孤児たちのために、今もなお貴重なお働きを続けていらっしゃ
います。私は、この本を初めて読んだ時、目を覆いたくなるような悲惨な記録の連続に強い
衝撃を受けました。





 1979年12月、インドシナの難民キャンプ。
 そこで犬飼さんは「子供でなくなってしまった子供」と出会います。カオイダンという所
のキャンプ内の病院テントにその子はいました。ひとりぼっち。親は死んだか殺されたか、
はぐれたか、兄弟姉妹はいたのか死んだのかわかりません。一言も口にしないでただ空を見
つめたままの子供です。
 衰弱しきったからだは熱帯性の菌にとっては絶好の獲物でしたから、その子はいくつもの
病気をもっていました。国際赤十字の医師団が必死になって打てるだけの手を打ったのです
が、ついには「衰弱して死んでゆくしか残っていない」と、匙を投げざるを得ませんでした。
子供はもう、薬も流動食も全く受け付けない状態でした。
 その子供は、幼心に「これ以上生きていて何になる」そういう絶望を深く感じていたので
はないかと犬飼さんは思ったそうです。


 そんな時、一人のアメリカ人ボランティア青年が、名前をピーターと言いますが、医者が
匙を投げたその時からその子供をしっかり抱きしめることを始めたのです。子供の頬をなで、
接吻し、耳元で子守歌を歌い、二日二晩、彼は用に立つ間も惜しんで全身を蚊に刺されても
動かず、その子供を抱き続けました。そして三日目になりました。空を見つめたままの子供
は、なんとピーターの目をじっと見てにっこり笑ったそうです。
 犬飼さんは、「自分を愛してくれる人がいた。自分を大事に思ってくれる人がいた。自分
はだれにとってもどうでもいい存在ではなかった」、この意識と認識が、無表情の石のごと
くに閉ざされていた子供の顔と心を開かせたと言います。
 ピーターは、喜びと感謝のあまり、泣きながら、それでも勇気づけられて、食べ物と薬と
を子供の口に持っていきました。そして子供はそれを食べました。
 絶望が希望に取って代えられた時、子供は食べ、薬を飲み、そして生きたのです。





 イエス・キリストが私たちに示したものそれが先ほど読んだ聖書の言葉なのです。
「自分がいま、その立場にいたとしたら、何を人からしてもらいたいか、してもらいたいと
望むであろうことを、相手がだれであれ、いま、行え。愛とはそれよ」とキリストは語って
いるのです。
 抱きしめるという、ただそれだけの行為が、一人の子供の命をよみがえらせました。快復
が確実なものとなった時、セクションの主任がその子供をなでながら「愛は食に優る、愛は
薬に優る」と言ったそうです。「愛こそは最上の薬なのだ、食なのだ、この人々が求める者
はそれなのだ」。山の彼方から銃声が聞こえ、土埃のもうもうと吹きまくっていたカオイダ
ンで犬養道子さんはそう確信したと言います。


 人間は皆、自分の存在を絶対的に認めてくれる、人としての温もりを求めています。誰か
に抱きしめてもらいたいという思いを持っています。イエス・キリストの誕生を祝うこの時、
私たちにできることは少しかもしれませんが、「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさ
い」
という言葉に思いを寄せることができればすばらしいと思います。
 お祈りいたします。


◆祈 祷








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