『校報』第114号(ブログ版・その3) カンボジア・サービス・ラーニング

カンボジア・サービス・ラーニング

 

 

 師走の22日〜28日の日程で『第4回カンボジアサービスラーニング』が開催された。
 今回の研修のスローガンは、「交流を通じて、カンボジアの子供達を笑顔にし、同時に日本とカンボジアの豊かさのちがいについて学ぶ機会を持とう」ということに決定した。
 私は、生徒たちが「いかに主体的に取り組み、自分自身の感性の中で何を感じ取れるか」というテーマを掲げ、一歩引いた立場から生徒の活動を見守ることにした。


1.中学校での授業(最初の授業は現地の中学校で行った。)
 案内された中学校の教室に行くと、現地の子供たちは合掌し、立ち上がって迎え入れてくれた。授業を受けることへの喜びに溢れ、自主的・主体的に受け入れて学ぼうとする現地の子供たちの姿勢には、日本が豊かさの中でいつの間にか忘れてしまった何か、また忘れてはならない何かが溢れているように感じ、改めて学ぶ姿勢の大切さを痛感したのである。
 現地の子供たちは、お揃いの制服を身に纏いこれから始まる授業に期待を膨らませている様子。
 一方、本校の生徒はその雰囲気に一瞬たじろぎ、言葉の壁に対する恐怖からか『誰が第一声を話すか』と教卓付近で譲り合っている始末。私は一瞬自分が前に出てコントロールすべきかと悩んだが、生徒たちの貴重な経験を奪ってはいけないと思い返し、再び教室の後方に陣取り撮影に専念することにした。
 本校の子供たちは、自信なさそうな小さな声で「チョムリアップスオー」と挨拶し、自己紹介を始めたが現地の子供たちには聞こえておらず、ますます緊張が増幅されていき、本校の生徒たちは緊張で顔をこわばらせていた。そうは言っても授業は進めなければならないのは事実、2教室に分かれて説明のために用意した図入りの模造紙を使って身振り手振りで説明を始めた。必死に伝えようと頑張っており、現地の生徒もその思いに応えようと作業をはじめる姿には感動を覚えた。「真心をもって伝える」とは、まさにこのことであるように思えたのである。そこには、『教える側と教わる側の良い関係』があり、伝える側も教わる側も互いに一つの学びに主体的に取り組むことで大きな力を生み出す素晴らしさを再確認したものである。


2.SATO JAPAN CENTER
 昼食を挟んで、午後はSATO JAPAN CENTERで授業を実施した。
 この施設は、毎回コーディネイトして頂いている佐藤先生が開設されている施設で、『塾』のような『学童施設』のような場所である。この地域は、カンボジアの原風景が残っており、道は整備されておらず、道の周りに簡易的に建てられたお店が連なっているようなところであった。この地域の人の多くは裸足で生活しており、プノンペンのホテル近くでは想像もできないほどの『田舎』であり、大きな経済格差を感じた。
 2時半頃から研修をさせていただく予定だったが、予想よりも早く子供たちが集まってきた。
 生徒たちは、授業の準備を終えると外から興味津々で中を覗き込む幼い子供達と『追いかけっこ』を始め、世界共通の遊びと子供たち特有のスキンシップを楽しんでいた。幼い子供たちの猛烈なアプローチに最後は本校の生徒も疲弊してしまったが、一言「子供はホント元気だわ〜」とつぶやいている本校の生徒の発言に思わず笑ってしまったのは紛れもない事実である。
 2時過ぎ、佐藤先生の呼びかけで、少し時間を早めて研修授業をスタートした。
 入口にたくさん集まっていた子供のうち、カードを持っていつも通っている子供だけ室内に入れるのだが、本校の生徒の「かわいそうだから、入れてもいいのでは」という一瞬の感情に流された発言に対し、現地のスタッフや佐藤先生が「NO」だと言い、「それをやってしまうと秩序がなくなる」「ただかわいそうだという思いだけで行動してしまうと、何の努力もしなくなる」という深い言葉に考えを改めさせられた。
 研修授業は、午前の中学校での経験を生かしてきちんと挨拶をし、身振り手振りで塗り絵と自由お絵かきの2枚をラミネートして下敷きを作成する工程について説明し、一緒に作品を作るなど自信をもって接していた。経験は人を育てるというが、こんなにも即効性があるのかと驚いたものである。
 さらに、約40人の子供たちが順次入室してくる中に制服を着た5人の中学生がいた。幼い子供たちと同じように作業をし、帰る際には佐藤先生や我々大人に対し、改めて近寄ってきて合掌し笑顔で頭を下げて感謝の気持ちを表していた。この中学生は誰から言われた訳でもなく、自主的にその行動をしていたのである。
 教育の本質は何かと問われるとそれぞれ意見は分かれてしまうと思うが、教育の基礎となる躾において大切なものは何かと問われたとき、「ハイという素直な気持ち、ありがとうという感謝の心」と答える人は多いと考える。カンボジアにはその素直さと感謝の心があり、積極性と笑顔、些細なことへの感謝の気持ちを忘れない子供たちから多くのことを学び、考えさせられた。

 

3.小学校での運動会サポートと研修授業(糸電話実験)
 1日移動とプノムダ遺跡巡りと更に貧困問題を抱える地域の子供たちとの交流を挟んだのち、TAKEOの小学校を訪問した。この小学校には、佐藤先生の寄付によって建てられた校舎や本校からも扇風機や卓球台などの寄付した品があり、大切に使っていただけている様子であった。
 今回新しく、パソコン購入資金として献金を集め現地で購入したものもカバーを掛けて教員室に置かれていた。
 午前中は現地小学生の運動会の手伝いをさせていただくことになった。佐藤先生は「最初は何もできずに大変だった。先生たちも当初は丸投げ状態で職員室で休んでいた程。一緒になってやらないなら“もう来ない”と怒るところから始めたんだ」と熱っぽく話をされていた。
 実はやる気満々でホイッスルまでカバンに潜ませていた私、冒頭にも掲げた自分自身のテーマを前のめりの気持ちの中で一瞬見失いかけていた。しかし、佐藤先生の言葉と本校の生徒たちが現地の先生やスタッフと一緒になって準備する姿に自分の役割を再認識し、再び撮影に回り一歩引いたところから見守ることにした。
 先ずは整列、先生の指示に従ってすぐに並び終え、掛け声とともに整頓。実に素晴らしい光景であった。現代の日本では、兵隊式と揶揄されきちんと整列させることさえ難しいご時世、規律と統制のとれた整頓に私自身、兵隊式と揶揄されるような悪いイメージは見いだせず、むしろ現代の日本人にも体験させるべき何かがあるように感じたものである。
 整列した現地の小学生を前に本校の生徒が自己紹介、それに対し現地の先生の掛け声で大きな声で挨拶をする小学生。学校の先生もまたこの数年で育てられ、成長した姿を佐藤先生に披露しているようでもあった。
 運動会がスタート。紐で囲われた競技エリアを現地の子供たちが陣取り、先ずはお手本として本校生徒が模範演技。ゴールした際には自然と拍手が起こり、飛び跳ねながら自分の出番を待つ子やついつい遊んでしまう子など世界共通の子供の状況がありつつ、和やかなムードで会が進行していった。
 1番になった子を景品渡し場所まで連れて行く生徒、二人三脚の為に脚を結ぶ生徒、それぞれが自分の持ち場を見つけ、とても良い学びを与えていただいていた。
 運動会が終わり、午後に来る生徒との入れ替わりの為に片付けをしていると校庭で泣いている子が1人、その子を心配して囲う数人の友達がいた。最初は何故泣いているのか分からなかったが、みんなに参加賞として配ったノートとボールペンを貰えなかったことが悲しくて泣いていたとのこと。それを見た本校の生徒は必死に問題解決しようと動き回り、自分自身が渡されたノートとペンを渡そうとしていた。結果的には予備に確保しておいたノートとペンを渡したのだが、泣いてしまう子供の純粋さに心動かされたのと同時に、必死に問題解決しようと動き回る本校生徒の姿に温かい気持ちになり、生きた教育の姿に感動すら覚えたエピソードでもある。
 暫しの休憩を挟んで、後半は教室を使って糸電話の実験授業を行った。
 前日の夜、昨年まで本校に留学していたムーニー(男子生徒:現地の高校3年生)とソックリン(女子学生:現地の大学1年生)と入念に打ち合わせをし、日本で準備していた説明用の模造紙に書いてきたクメール語が全く意味を成していないことを知り、一緒に通訳してもらいながら授業を進めることを確認、本校生徒が説明、留学生が通訳、現地の先生が生徒と一緒に反応する。素晴らしい連携で授業をスタートした。
 2人1組で糸電話を作り、現地の先生も一緒になって楽しみながら実験する姿は、本当に楽しそうであり、本校の生徒も実は実験そのものを楽しみながらやっていたのも事実。和気藹々とあっという間に時間が過ぎていった。その後、クリスマス会ではクメール語を使ってクリスマスの説明、現地の子供たちも分かっている様子だったが、必死にクメール語で説明する本校生徒の気持ちに応えようと拍手で応えており、和やかな良い時間を与えられた。
 今回の研修授業を通じ、本校の生徒は多くの学びを得ることができ体験から大きな成長を与えられたと感じた。サービスラーニング、まさにこの言葉がこの研修の主旨。改めて多くの生徒に参加してほしいと願い、経済成長著しい5年後・10年後のカンボジアがどのように発展し、この研修がどのような形になっているかも気になるものである。
 ふと振り返り、5年後・10年後の日本、また関東学院六浦にも明るい展望があるよう一日一日を確実に歩まなければならないと思い、教育に携わる上で忘れてはならない部分を再認識する研修であった。

 

(引率教員)



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